大戸屋で黒酢の晩餐「季節の野菜と豚と鶏つくねの黒酢あん」

〜大戸屋「季節の野菜と豚と鶏つくねの黒酢あん」〜

俺がその背中を追い続けている男、Tzo社長。 常に時代の先を読み、平安清明を創造するボスと共に、今宵、俺たちが暖簾をくぐったのは「大戸屋」だ。 ビジネスの戦場を離れ、束の間の休息……いや、食という名の新たなセッションの始まりだ。

Tzo社長とのテーブル。半端なものは頼めない。 俺が選んだのは「季節の野菜と豚と鶏つくねの黒酢あん」。 もちろん、今の俺のハングリーさを表現するかのように、「おかず倍盛り」でオーダーさせていただいた。

■ 着膳：黒光りする香り高い宝石たち

運ばれてきた膳を見て、俺は思わず背筋を正した。 皿の上で妖艶に黒光りする「黒酢あん」の海。その中で、素揚げされた野菜と肉たちが、まるで俺たちの揺るがない信念のように堂々と鎮座している。 立ち昇る湯気。鼻腔をくすぐる酸味。これぞ大戸屋の黒酢の香り。社長との会話の合間に、俺はこの黒き宝石たちへ箸を伸ばす

■ 第一幕：豚の咆哮、つくねの誘惑

まずは「豚の竜田揚げ」から。 箸で持ち上げると、ずっしりとした重量感。

ガリッ！ジュワッ……！

衣のハードな歯ごたえを突破した瞬間、豚の脂がどっと溢れ出す。 鶏にはない暴力的なまでの旨味。そこに濃厚な黒酢あんが絡みつき、脂の甘みを極限まで引き立てる。 口の中が「旨味の洪水」だ。社長の前でなければ、唸り声を上げていたかもしれない。

間髪入れずに「鶏つくね」へ。 豚が「剛」なら、こいつは「柔」。 フワッとした歯ごたえの奥で、軟骨の「コリッ」とした食感がリズムを刻む。 硬すぎず柔らかすぎず、小気味良い音でな骨が口の中で弾む。そして鼻に抜ける大葉の香り。濃厚なタレの中で咲く一輪の花のように、あまりにも爽やかだ。これ好きだ。

■ 第二幕：赤と黒の魔法（マジック）

話も弾み、半分ほど平らげたところで、俺は卓上の「黒七味」に手を伸ばす。 これが、通だけが知る「大人の味変」だ。

以前、Tzo社長から七味には○○が入っているから、たくさん取ったほうが元氣になる、と伝授されてから、積極的にとるようにしている。

パラパラと黒い粉雪を振りかける。 再び肉を口へ……世界が変わった。 柚子と大葉の鋭い香りと痺れが、甘美な黒酢あんを一瞬にして「キレのある大人のソース」へと昇華させる。重厚さが軽さに変わり、研ぎ澄まされた旨味だけが残る。

さらに、最後の一口には「赤七味」を追撃。甘・酸・辛のトライアングル・インパクト。 俺の箸は、もう止まらない。大戸屋はお米がうまい。残念ながらおかわり自由サービスは終わってしまったが、大盛り＋30円なので、迷わずチョイスするのが漢の流儀だ。

■ 終幕：背中で語る漢の奢り

完食。皿に残った黒酢さえも愛おしい。 倍盛りの肉も、たっぷりの野菜も、全て俺の血肉となった。

ふと我に返り、伝票に手を伸ばそうとしたその時だ。 「ここはいいから」 Tzo社長の静かな一言。 スマートすぎる。そして、温かい。

「ごちそうさまでした」 深く頭を下げる俺に、社長はニヤリと笑うだけ。 この黒酢あんのようなコクのある優しさと、黒七味のようなピリッとしたカッコ良さ。 俺はまた一つ、この男に惚れ直したようだ。

店を出ると、夜風がいつもより心地よく感じられた。 最高の食事と、最高のボスに乾杯だ。